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パキスタンの天然石
パキスタンはさまざまな種類の石が産出する国です。
無数のペグマタイト鉱床が存在し、クォーツ(水晶)、エメラルド、ルビー、サファイア、トパーズ、トルマリン、クンツァイト、ガーネット、スピネルなど、そこには多彩な石が見つかります。
ヒマラヤ山脈とカラコルム山脈、その他の壮麗な山岳地帯が広がるノーザンエリア(北部地域)を中心に、『パキスタンの石屋さん』で紹介しているクリスタルたちの生まれ故郷、それぞれの産地周辺の特徴をお伝えします。

■■■ノーザンエリア:パキスタン北部地域(Northern Areas)
世界第2位の高峰K2(8611m)を始めとする雄大なカラコルム山脈、ちょうど西端になる標高8125mのナンガパルバットを含むヒマラヤ山脈、ヒンドゥークシュ山脈をかかえるパキスタン北部ノーザンエリアにはほとんどの産地が集まっています。
【ギルギット(Gilgit)】
「パキスタン産と言えばギルギット」が思い浮かぶくらい、有名な産地です。
ギルギットの街は標高1,500mの盆地にあり、いまだに最終的な解決を見ないインドとの帰属問題に関するカシミール(カシュミール)紛争の舞台、ノーザンエリアにおける事実上の首都になります。
地域の中心になる経由地として周囲から石が集まってくることから、付近のフンザやその他の山から産出するものも含めて、ギルギット産と呼ばれることになり、パキスタンのクリスタルの代名詞とも言えるほどになっているのではないかと思われます。
また、市街から5kmの場所にある「カルガーの磨崖仏」は地上約30mの高さに仏像が彫刻された崖です。
春にはアンズの花が咲き乱れ、9月頃には紅葉が見られるというギルギットは、観光の拠点でもあります。
クリスタルクォーツ(水晶)とブラックトルマリンは、単結晶からクラスター(群晶)まで多彩な結晶が産出し、トルマリンはブラックだけではなく、ピンクやグリーンの色合いも多く見られます。
また、ギルギット産として流通する黒水晶と言っても良い色合いのものも見かけられますが、パキスタンの黒水晶は、いわゆるモリオンと呼ばれる真っ黒な水晶とは違って透明感があるので、個人的には濃い色合いのスモーキークォーツだと理解しています。
【フンザ(Hunza)】
1974年まで藩主が支配していた旧フンザ藩王国の名前に由来するフンザは、ギルギットまでは直線距離にして約50km、バスならば約3〜4時間の道のりにある谷間の地域です。
イングランドの小説家ジェームズ・ヒルトンの著作「失われた地平線」(1933年)に登場するシャングリラ(理想郷)も、フンザの谷からインスピレーションを受けて生まれたと考えられています。
また、宮崎駿監督のアニメ「風の谷のナウシカ」の風の谷はフンザがモデルと言われ、この地域の民族の宗派および言語がパキスタンの他の地域とは異なるということも合わせて、非常に好奇心とロマンがそそられる神秘的な場所です。
この異彩を放つエリアで誕生したクリスタルの生い立ちが頭に浮かびます。
フンザのルビーは、北西辺境州ミンゴーラ近郊のスワート渓谷で採れるエメラルドと並んで重要なパキスタンの宝石鉱物と言われています。
また、パキスタンのブルースピネルはとても有名で、ギルギット産やカシミール産と紹介されているものも見かけますが、フンザのスピネルもよく知られているようです。
【スカルドゥ(skardu)】
バルティスタン(Baltistan)のスカルドゥは標高2,438mの街。
世界第8位の高峰ナンガパルバットから約100kmの場所に位置し、政府が認める57のトレッキングコースのベース地として多くの旅行者が訪れる、パキスタン随一のリゾートと言われています。
市街から15kmほどの距離に空港が設けられ、首都イスラマバードからのその空路は、カラコルム山脈を一望することのできる素晴らしい展望が楽しめるそうです。
ラーワルビンディーやギルギットからバスが出ているものの、陸路の場合は道が悪く困難な道のりのようです。
鉱物の産地としてのスカルドゥは、ギルギットに次いでよく耳にする場所です。
最も有名なのはアクアマリンですが、ブラジルともアフリカとも違う独特な個性を持ったアメジスト、ピンクムーンストーンなど『パキスタンの石屋さん』でも紹介している魅力的な石があります。
ただし、ここもギルギットのように、バザールに集まってきた周辺産地の石もまとめて「スカルドゥ産」として紹介されているケースがあるかもしれません。
【シガル(Shigar)】
シガル渓谷は、同じバルティスタンのスカルドゥの北東約20〜30kmに位置する小さなバザールを持つ街。
南にはこの地域を支配してきた歴代の王が住んでいたシガルフォート(城)がそびえ、パキスタン政府が出している代表的なトレッキングのルートにも組み込まれているエリアです。
このシガル渓谷のアルカリ(Alchori※鉱山名か地名と思われます)で採れる鉱物は、ルチル(金紅石)の柱状結晶やエピドート(緑れん石)など、ユニークなものが目立ちます。
■■■カシミール地方(Kashmir)
現在は、パキスタンとインドのほぼ中間付近に停戦ラインが引かれているそうですが、過去には領有を主張する両国が大小の軍事衝突(カシミール紛争)を繰り返してきた地域です。
最大の都市はシュリーナガル。インドのジャンムー・カシミール州の州都になっています。
この地方で採れた最上級品のサファイアは幻の宝石と言われているほど貴重です。
カラコルム山脈とヒマラヤ山脈の間に、並行して伸びるラダック山脈とザンスカール山脈が存在し、そのザンスカール山脈の中間の高地にあるバッダール渓谷で、サファイアが最初に見つかったとされています。
19世紀後半、最上級の結晶が採れる鉱脈は数年で枯渇してしまい、幻のサファイアと呼ばれるようになりました。
正式な鉱山運営は停止されたものの、20世紀半ばまでに上質な結晶がわずかに見つかっただけで、それ以後は本格的な採掘は行われていないそうです。
上述したような紛争地帯ですから、手つかずのまま日の目を見ていない鉱脈の中に、幻と言われる最高級の結晶が眠っている可能性は十分にあります。
■■■北西辺境州(North-West Frontier Province)
アフガニスタンと国境を接するエリア。歴史上、過去においてアフガニスタンの支配下に置かれていた時期がたびたびありました。
州都のあるペシャーワル一帯の盆地はハイバル峠(ペシャーワルの西側)を通じて古くから東西の文化圏の交流の場所であると同時に、覇権争いの場として興亡が繰り返されてきた場所でもあります。
現在、国境近辺は複数の部族がそれぞれの戒律の下で生活を営む「トライバルテリトリー(部族領域)」として、パキスタン政府の管轄外におかれています。
ペシャーワル市内の東、さまざまなバザールでにぎわう旧市街の西エリアではジュエリーバザールが開かれ、土産物の定番としてはやはりラピスラズリの装飾品が目立つと言います。
【コーヒスタン(Kohistan)】
北西辺境州のエリア内、カラコルムハイウェイをベシャーム(Besham)からパッターン(Pattan)に進んで行くと、コーヒスタン地区の政治的中心地であるダッソー(Dassu)に至ります。
さらにそのまま行くと、ナンガパルバット山と岩絵で知られるチラースのエリアへとつながっていきますが、コーヒスタンからチラースまでのインダス川南岸は夏場は灼熱の暑さになるという山岳砂漠です。
このコーヒスタン地区の中でもインド・カシミール地方よりにあるマンセーラ市(Manshera)のカガン渓谷地域・ナラン村(Naran-Kagan Valley)のソパット(Suppat)渓谷が、世界でもよく知られているペリドットの産地です。
発見されたのは1990年代に入ってからだそうで、すでに20年近く経ちますが、まだ地質学的な調査は進んでいないようです。
しかし、コーヒスタン地区の地層には火成岩の帯が存在することが分かっており、ペリドットは火山のあるところで見つかることが多く、その結晶が形成される条件を十分に備えていることはあきらかと言えます。
【スワート(swat)】
北西辺境州、ペシャーワル盆地に流れ込むスワート川中〜上流域にある渓谷で、下スワートのスワート川南岸に広がる中心都市のミンゴーラを始め、村落が点在しています。
「東のスイス」と形容される、針葉樹の森と渓流、草原、豊かな緑に囲まれた土地です。
また、この地域では15世紀までは呪術的要素を含むタントラの教えを説いたチベット密教のルーツとも言える仏教が信仰されていました。
スワート渓谷のエメラルド鉱山はアフガニスタンのパンシール鉱山とともに、南アジア最大規模の産出量を誇ると言われ、世界最高の結晶を産出するコロンビアと同じ熱水起源による産状にあるため、透明度の高さと色合い(緑の発色要因であるクロムを多く含む)において最上品質の結晶を産します。
しかし現在、このエメラルド鉱山の採掘権をタリバン勢力が握っているという事実(‘09年3月24日BBC報道)は、残念なことです。
採掘は再開されているものの、市場に流通したエメラルドを買うだけで間接的にではありますが、そこに政治的な意味が生じてしまうことになります。
【カトラン(Katlang)】
交易都市として古くから栄えてきたペシャーワルの北東に位置するマルダン(Mardan)地区からさらに20kmほど進むとカトランの町(平野)があります。
その郊外、グンダオ(Ghundao)の丘と呼ばれる場所がピンクトパーズの産地。
ガンダーラ遺跡として有名なタフティ・バーイ(Takht-i-BahiまたはTakht Bahai※1980年ユネスコの世界遺産に認定)は、マルダンから約15kmの場所です。
ウルドゥー語において、「Takht」はスローネ(王座)を、「Bahai」は水または春を意味します。
1970年代初め、そうしたロマンにあふれたエリアでピンクトパーズは発見されました。現在では周辺にも産地が見つかっているそうですが、このカトラン一帯が世界で唯一、天然のピンクトパーズが採れる場所とされているのも、何か意味のあることなのかもしれません(無色透明や淡いブラウンのトパーズも産出)。
なお、『パキスタンの石屋さん』で紹介しているピンクトパーズはスカルドゥ産と聞いていますが、おそらくカトランからやって来たものと思われます。
※参考:『地球の歩き方‘07〜08パキスタン』(ダイヤモンド社)
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